その天使は崎山をちらっとは見たが、直ぐに小走りで崎山の隣を抜け、去って行った、天使の長い髪が小走りの運動でほのかに乱れ、崎山の辺りにいい香りが残された、
「天使だ、、」
本の事などすっかり忘れ、崎山は滝山高校二階の渡り廊下で立ち尽くした。
ガラッ!
勢いよく萱島が“図書室”のドアを開けたが、見慣れたこの図書室には崎山の姿は無く、机や椅子、本棚が一つしかない大きな窓から差し込む夕日で綺麗な橙の空間があった。
「居ないじゃん」
ドアを開けた姿勢のまんま萱島が諦めにも聞こえる口調でぼやいた
仕方なくドアを閉め、帰ろうとした時
「あれ?あいつ、、」
渡り廊下で固まって佇んでいる崎山が見えた、萱島はバッグから崎山の本を取り出し崎山の所ヘ行った
(何であんな所に?)
渡り廊下に来たものの崎山は一向に動く気配が無い、とりあえず本を返そうと崎山に近づき、
「君さ、本忘れたよ」
崎山に本を差し出した、
「!!っあっああ、ありがとう、」
崎山はあわてふためき本を受け取った、そして崎山が去ろうとした時、
「君、明日あの図書室に来てくれないか?聞いて欲しい話があるんだ。」
萱島が言った。