* * * * * *
キキキキィー―‐ッ
タイヤが擦れた匂いがした―\r
あたしの目の前では今、ドリフトが行われている。
辺りは多種多様な車と、ギャラリーで埋め尽くされている。
ギャラリーの中には、あたしよりは年上だと思うけど、
どう見てもまだ高校生位にしか見えない女の子が、
お気に入りの車の持ち主と意気投合して、キャーキャーはしゃいでいた。
『どう?!奈央。初めて見るドリフトは。』
あたしの隣に立つ聖人が言った。
『うん。凄いなって‥‥‥。』
『ハハハ。凄い?!凄いって何が?!』
『うん。何て言っていいか分からないけど‥あたしの知らない世界を見れた感動‥‥かな。』
『そっか。良かった。』
キキキキィーーーッ
キキキキキィーー‐ッ
一台‥‥また一台と、次々とあたし達ギャラリーの目の前、ギリギリの所まで、
ドリフト走行で迫って来る車の迫力に、
あたしは胸を躍らせた―\r
『奈央ちゃ―――ん!!』
少し離れた所からサトル君の声がした。
『おぅ、サトル。どうした?!』
聖人が、あたしより先に返事をする。
『新谷先輩と大沢先輩が二人の様子見て来いって言うからさ。』
サトル君は、息を切らせて走って来た。
『サトル、先輩達何処にいんの?!』
『新谷先輩は、車の中で寝てたけど、たった今起きた。
大沢先輩は、ギャラリーの女のコをナンパしてる。』
『ね‥‥寝て☆‥‥はぁ?!マジで?!』
サトル君が、ドリフトギャラリーにいたあたしと聖人を呼びに来てくれたから、
あたし達は一度、先輩達の所へ戻る事にした。