書けない鉛筆 第4話

ソウキュウ  2008-05-28投稿
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微妙な空気。
この施設には俺の他に4人いる。1番年長なのが俺。後は小学生の男の子達。男しかいない空間に、何故か俺の部屋に岡村千尋がいる。
「なんでいるの??」
なんでいるのって…↓
そうか、俺がこの施設にいるの知らないんだっけ。
『俺の部屋だからだよ』
「え?冗談でしょ?」
『なら誰の部屋なんだよ?』
ようやく岡村も事情が掴めてきたのか沈黙をし始めた。
『ようやくわかった?俺には親がいないんだ』
「うん、ごめん」
また沈黙。
『同情すんなよ。これはこれで居心地いいんだからさ』
「うん」
『そんな事はどうでもいい。岡村は大丈夫なのか??』
「うん。なんかママが今、これからの事で松尾さんって人に相談してるみたい」
『そうか…』
「家も燃えちゃったし、パパは海外にいてしばらく帰ってこれないみたいだし。」
愚痴をこぼし始める岡村。
『たくさん思い出ありそうな家だったな、お前の家。失礼かもしんないけど羨ましかったよ』
「もちろん、あの家で育ったんだもん」
『そうか』
ちょうど話を割るかのように
(ヒロ…ヒロぉ〜)
と扉の奥から呼ぶ声がした。
「はぁい」
岡村は部屋を出て行った。

もちろん、あの家で育ったんだもん

俺にはこの言葉が言えるだろうか?松尾さんにはとてもお世話になってる。俺達5人の父親代わりをしてくれてるし、ここまで育ててくれた人ももちろん松尾さんだ。でも本当の父親ではないという葛藤が中学生の時の俺にはあったんだ。
俺には岡村が言ったあの言葉が今でも羨ましい。

ガチャ

岡村が戻ってきた。俺のベッドに座り、俺の方をチラッと何回も見る。
『何?どうかした?』
「しばらくの間ここにいる事になったみたい。松尾さんが住んでもいいってさ」
『へぇ、っておい!部屋は?この施設5部屋あるけど全部使ってるぞ?』
「子供達の部屋の人数を2人ずつにするみたい。」
『そうか、よかったな』
「うん!」



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