「私は、両親から暴力を受けていました。この傷も。」
橋本は掌を見せた。
カッターで切ったかのような、深い切り傷があった。
「それ・・・、親に?」
ひどい、ひど過ぎる。虐待だ。
「だけど、次の日には、両親は私に暴力を振るったことを謝っていました。」
下を向きながら、橋本は言った。
「たまたま二人とも、精神が不安定で・・・無意識に私でストレスを解消していたらしいです。」
裕也は、もう彼女にかける言葉がなかった。
「・・・次の日、両親だけで心中していました・・・。私が可哀相だからって・・・・私が学校から帰ってきたら・・・二人とも死んでて・・・。」
橋本は泣いていた。
「私なんかがいたから・・・、二人とも死んだんだ・・・・・。」
裕也は、橋本がだんだん可哀相になってきた。
「だから私が殺したと同じでしょ!」
「違う!」
そう言って、裕也は橋本を抱きしめた。
「橋本のせいじゃないよ・・・!」
裕也の声は涙声になっていた。
「自分を責めるな・・・!お前は・・・殺してないよ・・・!」
裕也は、精一杯の言葉で橋本を励ました。
落ち着いたのか、橋本は口を開いた。
「私、両親の死体、まだアパートの部屋に置いてあるんです・・・。離れるなんて悲しいじゃないですか?」
「え・・・?」
裕也は退こうとした。
「だから、先輩も一緒にいてくれませんか?」
「は、橋・・・本・・・!?」
橋本が恐ろしい。
こいつはやっぱりおかしい!!
逃げろ!!
そうしようと思ったが、もう裕也の腹は、赤く染まっていた。
「ひっかかったぁ・・・。」
そして、裕也の腹に突き立てたカッターナイフを、思いきり縦にひいた。
裕也は、自分の腹から、腸やら、胃がこぼれ落ちるのが分かった。
「私が先輩の死体、処理してあげますからね。」
アパートの庭に、埋めてあげる・・・。