航宙機動部隊前史後編・3

まっかつ  2008-05-29投稿
閲覧数[570] 良い投票[0] 悪い投票[0]

フリースユニオン陣営は、正にこの後方体制の不備を突いたのだった。
幾ら中央域でも、過疎・難所はある訳で、彼等は本軍を後退させながら、ずるずるとギャームリーグ機動部隊を引きずり込んだのだ。
勿論、ギャームリーグ側もこの狙いに気付かなかった分けではない。
だが、既に宇宙統一政府を樹立すべしとの声に、彼等は背けなくなっていた。
純軍事的にはだから、早期戦線縮小による消耗の回避が幾ら正解と分かっていても、政治的な理由でギャームリーグ軍はこの賭けを続行せざるを得なかったのである。
しかも、それを煽るかの如く、フリースユニオン軍はしばしば艦隊を小出ししては、敢えて負け続けて見せた。
じわじわと損失を増やしながらも、今だ無敵神話に酔いしれているギャームリーグ機動部隊は、目前の戦果にすがり、心理的にもずるずると泥沼にはまって行くしか無かったのだ。

こうして彼等は、気付いた時には六0光年も敵に引っ張り回されていた。
数え切れない散発的な戦闘と妨害工作の為、彼等の戦闘継続力は限界に達していた。
特に、フリースニユオン=宇宙解放連盟陣営の取った通商破壊作戦は、ギャームリーグ軍に協力した民間船団を震え上がらせ、ギャームリーグの徴用を敬遠させたのは大きかった。

銀河元号一五二六年第四期一三日(修正太陽暦一0月一八日)、ギャームリーグ軍をトレヴィーゾ宙沖にまで誘い込んだフリースユニオン艦隊は、遂に決戦に及んだ。
この時先鋒を務めていたギャームリーグ軍第六・第七機動部隊は、弾薬の欠乏から効果的に反撃出来ない味方の為に、そのまま殿軍を引き受けて敵中に孤立。
凡そ四0時間に渡って抵抗を続けた結果、最終的には二00万隻に包囲されて、どちらも壊滅してしまった。
ギャームリーグ軍二個機動部隊壊滅―\r
これはフリースユニオン=宇宙解放連盟側が初めて収めた、勝利だった。
又、これはそれまで銀河中に轟いていたギャームリーグ機動部隊無敵神話の終焉を意味してもいた。

だが研究によれば、これは本当に勝利と呼ぶべきか怪しい内容だった事が判明している。
例えば、確かにギャームリーグ二個機動部隊、二八000隻を沈めた事は大戦果だったが、それと併せて敵に与えた損害合計約四五000隻に対して、フリースユニオンは被撃沈だけで実に一七0万隻も出していたのだ。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 まっかつ 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ