部屋は割と綺麗に片付いており、あるのはデスクとベッド、本棚、クローゼットのみであった。
デスクの上のノート型パソコンは、あまり使っていないのだろう、だいぶほこりを被っており、その横の灰皿には、吸い殻が溢れていた。
とりあえず寝巻を着替え、ボサボサの髪を整え、一通りの準備ができた男は一服しようとベッドの枕元にあったタバコを手に取り火を付けた。
あぁ、幸せだ…。
男は普通の人なら気が狂ってしまいそうなこの訳のわからない状況に何故かとても大きな幸せを感じていた。
「パパー、行こうよ〜!」
男がタバコをふかし、くつろいでいるとこに1階からマサトの声が響いた。
「おぅ、今行く〜!」
男はタバコの火を消し、1階へ降りるともうすでに妻と子供は準備を済ませており、男が降りて来るのを待っていた。
「あなた、行きましょ」
妻はメイクをほとんどしていないようで、すっぴんに近かったが、髪を整え、服もお洒落をした姿は更に気品と清楚さを増していた。
こんなに魅力的な女性と俺は結婚したのか。
「パパー、早く〜!」
男がそんな妻に見とれていると雅人が後ろから手を掴み前へ引っ張った。
「わかったわかった〜、今日はマサトの気の済むまで遊ぼうな」
我に返った男は雅人の小さな体を抱き抱え、玄関の方へ向かった。