3人が公園に着く頃には既に朝の優しい日差しはなく、代わりに活発な光がさんさんと木々達を照らしていた。
夏でもなく冬でもないこの気候は風が吹く度気持ちがよく、今すぐにでも目の前の原っぱに寝転がり寝てしまいたいぐらいだった。
しかし、今日は家族サービスの日。その様な事はまかり間違ってもする訳にはいかなかった。
男は妻と共に雅人を間に挟んだ並びで木漏れ日が降り注ぐ散歩道を歩いていた。
その時、男の目の端に見慣れた陰がサッと動いて行くのが見えた。
あぁ、もう終わりか…。
男は直感的に理解した。
すると男は急に膝を曲げ、雅人の肩に手をかけ、妻にも自分と同じ様な体勢をとる様促した。
「ぱぱ??」
「あなた、どうしたの??」
男は困惑する妻と雅人に半ば強引に自分の思う体勢をとらせた。
更に男は雅人を間に挟む感じで妻の背中に手を回し、強く、優しく抱きしめた。
「ありがとな…」
その瞬間男の周りの景色は一瞬にして消え、代わりに闇が包み込んだ。
あぁ、本当に、幸せだ……
男は完璧な闇の中、下からの風を感じながら思っていた。