そこには孝也の期待を裏切る様な何気ない朝の優しい光が屋上の床を照らしていた。
孝也は一先ず胸を撫で下ろし、あの奇妙な死体が飛び降りたであろう場所へ向かった。
孝也はそこへ着くと淵に足をかけ下を覗き込んだ。
しかし、やはりそこに見たのは孝也の期待を裏切る何ともない光景であった。
孝也は安堵とも落胆ともとれる表情で心配そうに後ろで待っている恵美を見た。
「何もないよ」
「だったら早く戻って来てよ。危ないよぉ。」
心配そうにこちらを見る恵美を見て孝也は急に馬鹿らしくなった。
何やってんだ…。
そう呟き、最後に下を一瞥した孝也の目に一瞬何かが飛び込んだ。
ね…こ…?
孝也が確かめようと身を乗り出したその時、孝也の目の前に猫が急に飛び出してきた。
何でっ!?
この世には空を飛べる猫もいるのか。
そんな事が孝也の頭をかすめたと同時に孝也は足を滑らせ、次の瞬間、孝也の体は外に投げ出されていた。
「孝也ぁ!!」
そう叫ぶ恵美の姿は一瞬にして孝也の視界から弾き出された。