雨ってキライなの。
濡れるのは嫌だし、
髪の毛だってごわごわになっちゃうでしょう?
でも、
一番の理由はね…
########
レイニーズ・ラブ1
########
「はあぁあぁぁ〜」
レジから店の外を眺めると、ザアザアという雨音とともに、色とりどりの傘がちらつく。
「あら、幸せが逃げちゃうわよ?」
私の肩を小突きながらそういうのは、店長のアケミさん。三十ちょっと過ぎには見えないくらいの童顔だ。
「だって店長…」
と、私が外を指差すと、アケミさんは妙に納得したようにうんうんと頷いた。
そう。
雨が降ると、
“あの人”が来ないのだ。
金曜夕方5時50分。
この時間に、決まって彼は現れる。
ただし条件は、
晴れた場合に限るということ。
だから今日は驚いたのだ。
カランカラン…
「いらっしゃいま…――」
その彼が、やってきたのだ。