「これは…一体?」
「造りは希代の奇抜典佐。朱緋(しゅか)色の鞘。」老人は少し興奮気味に語りだす。
「さらりと抜き放てば、漆黒に輝く、白金の刃。名を桐生(きりゅう)」
鞘から刀身が姿を表した。触れただけで切れてしまいそうな鋭い刃。
老人はニカッと笑いながらユータを見た。
「どうじゃ?オヌシ…この桐生を買わぬか?」
「は、はぁ?」
いきなりの事にびっくりしながらユータは老人を見た。「オヌシはいい眼をしておる。」
「…でも…お金が…」
ふっふっと笑うと、自分の後ろに積み重なった木箱を指差した。
「この木箱を切る事が出来たら、この桐生を授けよう。」
「えぇ???いいの?」
老人は無言で桐生をユータに差し出した。
ゆっくりと刀を抜いてみる。手にしっくりくる重みがある。
「……うりゃああ?」
……「ありがとう?大事に使うよ」ユータは桐生を腰にしまうと、宿に向かって歩きだした。ユータが消えた暗闇を老人は見ていた。「真っすぐないい眼じゃった。」ほっほっほと笑うと後ろの木箱を見た。真っすぐに切られた木。しかしいちばんしたまできれていない。刀で切られた木箱のいちばん下には子猫の兄弟が寝ていたのだった