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〇港から小樽へ戻り、朝里から“キロロリゾート”へ向かう途中に、その峠はあった―\r
〇港で新谷先輩と大沢先輩のゼロヨン対決を見た後、
あたし達は、その峠を目指して走っていた。
さっきと同様、新谷先輩のスープラに、あたしと聖人、
大沢先輩のGT-Rにサトル君が乗っていた。
『奈央ちゃん、さっき新〇でドリフトギャラリーは見たかい?!』
新谷先輩が助手席のあたしに向かって言った。
『はい。見ました。凄い迫力で、目の前ギリギリまで車が近付いて来るからビックリしました。』
『ハハハハハ。そうか。今度はこれから“毛無し峠”で俺のドリフト走行を見せてあげるね。』
新谷先輩は、笑いながらそう言うと、落ち掛けたサングラスを手で直した。
『先輩。ドリフト走行する時、奈央は車に乗せませんから。』
不意に、後部座席に座る聖人が言った。
『おっ。そうか?!俺の運転じゃ安心して乗ってられねぇってか?!
じゃあ、大沢のGT-Rに乗るか?!』
新谷先輩が不思議そうに聖人に尋ねた。
『いえ‥‥。ドリフトやゼロヨンやる時は、奈央を車に乗せたくないんです。』
その聖人の声は、真剣に話す時のトーンだった。
『おっしゃ。分かった。そういや、そうだよな。
俺もドリフト、ゼロヨンやる時は、女を隣に乗せた事なんて今まで一度もねぇからな。』
新谷先輩が言った。
そう言えば、さっき聖人の家へ行った時、聖人のお母さんの話を聞いたんだよね‥‥あたし。
だからかな―\r
聖人があたしのコトを思ってそう言ってくれてるんだってコトに直ぐ気付いたんだ‥‥。