『じゃあ、奈央ちゃんと聖人は、途中の駐車スペースで待機しててくれ。
俺が上から下へドリフト走行で下りて行き、
その駐車スペースの側のカーブでカッコ良くキメてやっから、しっかり見とけよ。
本当は一緒に乗せて体感させてやりたい所だが、仕方ない。
生憎、大沢のGT-Rは、その構造上、
ドリフト走行は、難しいしな。
ま、俺のテクなら四駆のGT-Rでのドリフトも可能だがな。』
新谷先輩は、“毛無し峠”を上る途中の、広い駐車スペースに一度車を停めた。
後続の大沢先輩が運転する、サトル君が乗ったGT-Rも続いて停まった。
新谷先輩とあたし達は車から下りた。
そして、新谷先輩は大沢先輩に事情を説明してくれ、
あたしと聖人は、大沢先輩の車に乗り込んだ。
要は、大沢先輩の車の中から、新谷先輩のドリフトを見届けようという事だった。
『本当は俺が奈央ちゃんと聖人を、
このGT-Rに乗せて新谷のケツにピッタリ付いて行けば、
バッチリ、新谷のドリフトが見れたんだろうけど、
聖人の大事な彼女の奈央ちゃんを助手席に乗せて、
高速で運転する訳にいかねぇから。
今日は、この駐車スペースで待機だ。』
大沢先輩はそう言うと、緩くパーマのかかった、
かなり明るい茶色の髪をフワッと掻き上げた。