梅雨コイ

merado  2008-05-31投稿
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一日中、雨。
この季節はいつもそうだ。
こんな日は外に出るのも嫌になる。
せっかくつけたワックスが台なしになるからだ。

この季節の雨を見てると自然に、別れた彼女のことを思い出せる。
そういう意味では梅雨の季節も悪くないだろう。

あいつは俺の幼なじみで、友達同然の女だと思っていた俺に突然告白してきた。
まだ若く、そういう経験がろくになかった俺にしたらそれは嬉しくもあり、同時にむずがゆくもあった。
しかし、断る理由などなく、動揺を悟られないようにしつつ、「いいぜ。」とぶっきらぼうに一言だけ言った。
それからの日々というのは告白された時以上にむずがゆかった。
そりゃ、そうだろう。
友達同然に思っていたのに、いきなり恋人関係になり、あいつはお弁当を作ってくれたり、なぜだかキスを迫ったりもした。
その度に、俺は「やめろよ。」と恥ずかしまぎれに言いつつも、あいつを友達以上の存在としてみていけているという実感を得ていった。
そんなむずがゆさを伴った、楽しい日々はふいに終わりを迎えた。
ちょうど梅雨時にさしかかっていた、その日は大雨で外に出る気など全くなかった。
しかし、そんな気持ちを裏切るかのように携帯電話が鳴った。
あいつ、からだった。
付き合い初めよりは幾分かはマシになった、ぶっきらぼうな口調で「何?」と言うと、あいつは「今から会いたい」と言った。
「この大雨の日に面倒くせぇな。」と思いつつもしっかりワックスをつけて出向いた。
待ち合わせは近くの喫茶店だった。
そこにはもうすでにあいつの姿があり、俯いて待っていた。
俺が無言で席に着いても何かを考えているのか、何も話さない。



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