梅雨コイ

merado  2008-05-31投稿
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しばらく経って言ったのが、「今新しく付き合ってる人がいるんだ。だから、別れよ。」だった。
あっけにとられていた俺が言い返す暇などなく、あいつは金だけ置いて出て行った。
帰り道、俺は傘を差すこともなく苦しみに堪えつつ、思った。
「この苦しさは何なのか?この胸をさすような痛みは何なのか?」と。
そして、理解した。
俺は彼女の事が好きだったのだ。
居なくなって分かるなんて、とんだ笑い者だが事実は笑えなかった。
俺があいつの事を好きだった?
友達同然に思っていた奴なのに?
しかし、思い当たる節もある。
お弁当を作ってきてくれた時、キスを迫ってきた時、あいつは俺の中でも彼女だった。
ふと、顔をあげてガラスに写ったのは、雨でワックスがとれて、グシャグシャになった髪でたたずむ俺、一人だけ。

今になって思えばあの時の俺は周りからは惨めに見えていたかもしれない。
しかし、その時の俺はちっとも惨めじゃなかった。
なぜなら、俺が彼女のことを好きだったからだ。
好き。という気持ちはひどくとらえづらいと思っていた俺にとって、それはとても新鮮で心地良いものだったのだ。
姿は惨めでも、心は彼女で充たされていた。

今、その恋という心地良さを思い返して言いたい。

「梅雨コイ」

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