二人の不良もまるでハエを追い払うように糸もかんたんに倒されてしまった。
「大丈夫?」
座り込んだ娘に目線を合わせようと男は軽くしゃがむ。
かわいそうに。身体中が蹴られたアザでいっぱいだった。
だが気のせいか、ゆっくりとアザが消えていっているように見えた。男は娘に視線を戻した。
「君、ノイザーなんだね。」
娘はうつむき答えた。
「そうです。」
そのノイザーと言うものがなんなのか。それはまたのちにわかることなのだが、彼女はどうやら、その名前を背負っていることで、今までたくさんのいじめや差別を受けていたようだ。男から汚い言葉を吐かれるのではないかと、ぎゅっと目をつぶった。
「君の家まで送ってくよ。大丈夫。俺はその辺の人間よりデキがいいんだ。」
男はけろっとしてそう言った。
今までの緊張感がすっとほどけたせいか、彼女の目から涙がこぼれた。