奈央と出会えたから。<162>

麻呂  2008-06-01投稿
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『大沢ぁ――!!
そんじゃ行くぜ!!
おいっ!!サトル!!

さっきからボーっとつっ立ってねぇで俺に付き合え!!』





新谷先輩は、サトル君をスープラに乗せ、峠の頂点目指して走って行った。



平日の真夜中だけに、この広い駐車スペースには、あたし達を乗せた大沢先輩のGT-Rだけしかいなかった。



その車の中には、大沢先輩、聖人、あたしの三人だけ。



あたし達三人は、新谷先輩がドリフト走行で下りて来るのを、



今か今かと待ち構えていた。





『あ〜あ。さっきのギャラリーの女。

まんざらでも無さそうだったからイケると思ったのによぉ‥‥。

男いんじゃねぇか‥くそっ。』



突然、大沢先輩がかなり大きめの独り言を言った。





『大沢先輩、付き合ってるヒトいるんじゃなかったですか?!』



聖人が、先輩に対して言うにはかなり失礼な質問をした。





『二週間前に別れた。』



大沢先輩は、やっぱり軽いヒトだ―\r



『大沢先輩、その前のヒトも1ヶ月持たなかったっスよね?!』





聖人もそんな質問しなくていいってば〜!!



大沢先輩怒っちゃうよ〜!!





『俺、一度抱いた女には、直ぐ興味無くなるんだよな。』



今の言葉撤回!!



大沢先輩て‥‥何てヤツ‥‥‥。





『先輩にとってパートナーに求めるモノはカラダだけですか?!』



ひゃあ‥‥聖人‥‥なんて失礼なコトを‥‥‥。





『自分のモノになったら、もう興味が無くなる。それだけだ。車も同じさ。

このGT-Rも、そろそろ飽きて来た頃。』


聖人の失礼な質問にも、涼しい顔して淡々と答える大沢先輩て、



かなりの遊び人なんだなって思った。





『俺と大沢先輩て全く正反対ですね。

俺は好きなヒト一人をずっと守りたいって思う。』



『おぅ。お前は奈央ちゃんを大切にしてやれよ。

俺が言っても、全然説得力ねぇけどよ。
俺の様な最低な男にはなるなよ。』



そう言った大沢先輩の横顔が、



どこか悲しそうに見えた。





キキキキィー―‐ッ


平日の“毛無し峠”の真夜中の静寂を打ち破るかの様に、



その音は、辺りに響き渡った―――



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