『大沢ぁ――!!
そんじゃ行くぜ!!
おいっ!!サトル!!
さっきからボーっとつっ立ってねぇで俺に付き合え!!』
新谷先輩は、サトル君をスープラに乗せ、峠の頂点目指して走って行った。
平日の真夜中だけに、この広い駐車スペースには、あたし達を乗せた大沢先輩のGT-Rだけしかいなかった。
その車の中には、大沢先輩、聖人、あたしの三人だけ。
あたし達三人は、新谷先輩がドリフト走行で下りて来るのを、
今か今かと待ち構えていた。
『あ〜あ。さっきのギャラリーの女。
まんざらでも無さそうだったからイケると思ったのによぉ‥‥。
男いんじゃねぇか‥くそっ。』
突然、大沢先輩がかなり大きめの独り言を言った。
『大沢先輩、付き合ってるヒトいるんじゃなかったですか?!』
聖人が、先輩に対して言うにはかなり失礼な質問をした。
『二週間前に別れた。』
大沢先輩は、やっぱり軽いヒトだ―\r
『大沢先輩、その前のヒトも1ヶ月持たなかったっスよね?!』
聖人もそんな質問しなくていいってば〜!!
大沢先輩怒っちゃうよ〜!!
『俺、一度抱いた女には、直ぐ興味無くなるんだよな。』
今の言葉撤回!!
大沢先輩て‥‥何てヤツ‥‥‥。
『先輩にとってパートナーに求めるモノはカラダだけですか?!』
ひゃあ‥‥聖人‥‥なんて失礼なコトを‥‥‥。
『自分のモノになったら、もう興味が無くなる。それだけだ。車も同じさ。
このGT-Rも、そろそろ飽きて来た頃。』
聖人の失礼な質問にも、涼しい顔して淡々と答える大沢先輩て、
かなりの遊び人なんだなって思った。
『俺と大沢先輩て全く正反対ですね。
俺は好きなヒト一人をずっと守りたいって思う。』
『おぅ。お前は奈央ちゃんを大切にしてやれよ。
俺が言っても、全然説得力ねぇけどよ。
俺の様な最低な男にはなるなよ。』
そう言った大沢先輩の横顔が、
どこか悲しそうに見えた。
キキキキィー―‐ッ
平日の“毛無し峠”の真夜中の静寂を打ち破るかの様に、
その音は、辺りに響き渡った―――