昨日知り合った女は、何処かおかしかった気がする。
妙に挙動不審というか、落着きがないというか…。
まぁ、知合って間もない男にラブホに連れて行かれたら、誰だってそうなるか。
その女は、大きなキャリーバックを持って一人困った様な顔で立っていた。
俺はすぐ分かった。「家出少女だ」と。
声を掛けたら案の定、ホイホイと付いて来た。この手の女は簡単に付いて来る。
それで、ラブホ入ったんだけど、その女は仕切りにキャリーバックを気にするんだわ。
そんな大切な物でも入ってんのか?って少し気になったんだけど、その時の俺は欲求の方が強くて、そんなのどうでも良かった。
一通り終えて、その女に何気なく聞いた。
「ねぇ、さっきからバック気にしてるみたいだけど、大切な物でも入ってんの?」
すると女は、明らかに動揺しながら言った
「うっうん…。生モノが入ってるから。腐っちゃわないか気になって… 」
家出してる最中に何故生モノなんてバックの中入れてるんだ?って思ったけど、あんま気にせず、朝まで一緒に居た。
俺は寝ずに女と朝まで話していた。
途中で、何故か女に寝る様に促されたが寝なかった。
そんで、始発ぐらいの時間に別れて家に帰って来たんだけど…、やっぱ何かあの女おかしかった気がする。
ベットに横になり、気付くと昼くらい。何気なくテレビをつける。ニュース映像とアナウンサーの声が部屋に響く。
「昨日、午前8時頃東京都新宿区のアパートでバラバラ殺人事件が発生しました。」
俺はニュースに耳を傾ける。
「犯人は未だ逃走中ですが、目撃者の情報により犯人の特徴が明らかになっています。犯人は20代の女で、体格は小柄。ピンク色の上着に茶髪、大きなキャリーバックを持っていると言うことです。尚、犯人の女は凶器と被害者の頭部を持って逃走していると見られています。」
俺は、あの女の言葉を思い返していた。「生モノ入ってるから…」