その後は、よく覚えていない。
西沢の生命を糧に咲き誇った水蓮を呆然と見上げた先に見た、キラキラと光る戦闘機の大軍と、開きっぱなしの回線が知らせる、合衆国海軍の到来と勝利。
幽霊艦隊は爆撃によって数分を要さず爆沈。まるで最初から居なかったかのように、そう、幽霊のように消えた。
計三十機の合衆国海軍艦載機は威圧するようにあおかぜの周りを旋回し、合衆国への歓迎の意を表し、護衛を残して帰っていった。
余りの素っ気ない対応も、疲れ切ったあおかぜにはむしろ有り難かった。
自分を回収するための船が近付き、助かったと実感した途端、全て幽霊が見せた悪夢ではなく、彼らは西沢を連れていったのだと、涙が止めどなく溢れだしてヘルメットのバイザーを曇らせた。
嗚咽に嘔吐が混じり、実体を成して海水に落ちていく。
西沢は恐怖していただろうか。
数百人の悪霊からあおかぜを護った西沢も、真に悪霊と化した幽霊艦隊も、皆一様に恐怖し、憎悪し、焼かれていったのか。
或いは、この戦争が開幕し、今まで死んだ全ての人があのように苦しみながら地獄の火に焼かれたのか、
―――いづれ自分も
やめよう。ハルは小舟に揺られて眠った。