蒸せ返るような暑さの中、俺たちは神社へ向かって進んだ。
何かワケのわからない好奇心と胸の高鳴りがあったことは認めなければららないだろう。
勿論『背徳』なんて言葉は知らなかったが、『禁』を破る楽しみのようなモノを感じていた。
何人か誘ってみたが誰もやりたがらない。
結局俺とその姉弟の三人でやろうということになった。
鳥居の前、社を前にして俺と弟は手を繋いで姉を囲った。
そして…
かごめかごめ
かごのなかのとりは
いついつでやる
よあけのばんに
つるとかめがすべったうしろのしょうめん
だぁれ?
…今思えばたった三人でこの遊びはできなかったんだ…。
いくら幼かったとはいえ、そのぐらいの知識はあった筈だ。
あの時俺たちは得体の知れないモノに操られていたのかもしれない…。
姉はまず弟の名前を呼んだ。返事は無い。
次に俺の名前を…。
返事ができなかった。
何故なら歌が終わった時、俺たちはその子のサイドにいた。
二人しか回らないから彼女の後ろにこれなかったのだ。その代わりに彼女の後ろには鳥居があった。
そして彼女が振り向いた時だった。
その子の表情が変わった。
まるで恐ろしいモノでも見たかのように鳥居を指差し意味不明な言葉を叫んだ。
しかし俺たちには何も見えなかった。どんなに目を凝らしても鳥居の中には何もない。
だが異変は察知できた。
社の扉が開いたのだ。
まず最初に感じたのは強烈な臭いだった。獣臭と腐った魚のような腐臭が混じりあった凄まじい臭いだった。
鳥居を見ると段々と足音のようなものが近づいてくるのがわかった。それに伴うように臭気も強烈になっていく。
そしてたった一瞬目を離した瞬間…
彼女の姿が消えた。
それと同時に社の扉が閉まり、臭いも消え去った。
俺は激しい恐怖に駆られめちゃくちゃに走り、気がついた時には弟の方をほったらかしにして、傷だらけで村に戻っていた。
《続》