二人は、やっと大量の肉を食べ終えた。
「純太〜、すごい美味しかったね〜」
上機嫌な麻美は、窓から外を眺めながら言った。
しかし、返事がない。
純太は眠っていた。
「寝てるし・・・」
麻美は呆れた口調で言った。
起こそうとはしたものの、すっかり眠りの国に落ちた純太は、起きることはなかった。
麻美は仕方なく、一人で片付けに取り掛かることにした。
「汚い・・・」
焼肉の残骸を見て、片付ける気が失せた。油は洗うのが大変だからなぁ・・・
「仕方ないなぁ・・・洗ってあげよう。」
独り言を言いながら、渋々鉄板をキッチンに運ぼうとしたその時、
「ん?洗剤は?」
洗剤を探すが、見当たらない。
見つけたが、空っぽだった。
「うわ〜・・・こいつどうやって生活してるの?」
野蛮な純太の生活に、すっかり呆れてしまった。
しょうがないので、麻美はスーパーに買いに行くことにした。
「は〜・・・」
溜め息をつき、アパートを出ると、
あれ・・・?
白い・・・毛?角がある・・・
少し近付いてみると、ヤギの着ぐるみだということが分かった。
「置いてあるのかな?」
しかし、ヤギは瞬きをした。
え?
そう。
アレはヤギの着ぐるみなんかじゃない。
ヤギだった。昔の外国人が着ていたような、ドレスを着て・・・
バタンッ
何故か、麻美は部屋に戻っていた。
「・・・・な」
しかし、言葉がなかなか出てこない。
なに、アレ?
おかしいよ。
だって着ぐるみは、瞬きなんかしないし・・・。
どうしてハサミなんか持ってるの?
まるでお伽話の「狼と七匹の子ヤギ」の母ヤギみたいじゃない・・・
なんで?なんであんな単純なモノが怖いの?
ハロウィーンじゃあるまいし・・・
きっと、マニアのコスプレだよね、うん。
ただ、ちょっとよく出来すぎた着ぐるみだよ・・・ね・・・。