最初は牛嶋だった。車に飛び乗って、牛嶋はパソコンを膝の上に置き、歌詞を見ながら一週間の歌を口吟んでいる。
『やはり大林教授は、研究のデータをパソコンに入れてたんだ…牛嶋、そんなメロディーじゃないぞ…』
歌を終えた時、ハンドルとペダルの間から怪物の手がパソコンを払い退けて、牛嶋の腹に食らい付き腸を引っ張り出した。
しかし、牛嶋が悲鳴をあげてハンドルを切って事故を起して息絶えると、怪物の姿は消えていった。
次は大林教授。教授は話を終えると、忙しなくケータイのボタンを押している。
『悠子からの電話だったんだ…やはり悠子から村の名を教えてもらって…』
机の下の暗闇から怪物が現われ、教授は恐怖でケータイを思わず落とす。そして教授の顔は激痛で歪んだが、すぐには死なずに内臓をほとんど食い尽くされてしまった。
『もういい…やめてくれ』
たが、ポリトフスキーの意識は止めどなく祐輔の中に流れ込んでくる。そして悠子の記憶が鮮明な映像になって浮かび上がって来た。
『やめろ、見たくない…』
悠子の死の真相が知りたくてここまで来た祐輔だったが、その様はあまりにも惨い光景だった。
悠子はケータイを持ちながら一週間の歌を口吟んだ後、仰向けに押し倒され息絶えた。
『ちくしょう、ちくしょう…早く殺してくれ…』
悠子が襲われいる途中で場面は変わり、見慣れぬ男が襲われている。
それは石嶺助教授だった。石嶺助教授は心臓を患っていたため、襲われる前にショックで発作を起して死んでしまった。
『あ…こいつの姿が消えた…そうか、おまえは襲う相手の意識が在る間だけ存在するのか…』
今度は洞窟の祠の前で、女性が二人の子供に歌を聞かせている。
『あれ？…早苗さんだ…側にいるのは、俺と悠子…思い出した、あの時、早苗さんが菊枝さんに教わったというあの歌を歌ってくれたんだ』
その時、早苗が歌を終えると、洞窟の暗闇から怪物が現われて早苗の胸に食らい付いく。早苗は一瞬で息絶え、怪物も消えてしまった。
いったい何が起こったのか理解できず、二人は顔面蒼白になって早苗の遺体の側に座り込んでいた。
すると、美しい外国人が現われて二人を抱き締めた。
そう、それはポリトフスキーだった。
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