「幸せってのは不幸と釣り合ってるんだよ」
私はついてない人間だ。 昨日も接待で失敗し、契約はきっと破棄だろう。 今日も足取りが重い。なんて不幸な人生だ。 世の中にはもっと不幸な奴がいる?これまで何人ものお調子者にそう言われてきた。いっそこの悩みから解放されれば…
「幸せってのは不幸と釣り合ってるんだよ」
後ろを振り向くと小さな男の子が立っていた。
「こんな朝早くに一人でどうしたの?」
「おじさん、不幸なの。ガマンしてればいい事あるんだよ」
…なんだこのガキ。
「悩みから逃げたいの?」 …朝から不愉快だ
「できるならしてほしいね」 私はつっけんどんにいった。
「…」
瞬きの瞬間に少年はいなかった。 「…?」
「…線に電車が…」
ホーム内でアナウンスが流れた…私は後ろから衝撃を感じた…ホームに落ちる…電車が近づく…
悩みから解放される代償として死ぬのか? そんなのいやだ――
朝、目覚ましとしてセットしておいた携帯から音楽が鳴る。 …私は生きているのか? 夢は鮮明に覚えている。 昨日、真面目に死のうかと思った。そのせいか? 何にしても…夢で良かった…
「もうちょっと生きてごらん、幸せと不幸は釣り合ってるんだから」