オレの名前はシ"ロー。生まれてまだ数カ月。まだ歩くことも話すこともできない。しかしオレは他の赤ん坊とは違う。オレは大人の話がわかるのだ。
生まれた瞬間から、オレの耳は正確な音を拾うことができた。そしてオレが初めて光を感じた時、周りの人間が騒いでいる声が耳に入ってきた。
「おめでとう。元気な男の子ですよ。よく頑張りましたね。」
「ありがとう。」
オレの耳は正確だった。すぐにそれが、自分の母親の声であることがわかった。出産の疲れからか、すごく優しい声に聞こえた。それから続けて、オレの父親の声が鳴り響いた。
「よく頑張ったな、洋子。元気な男の子だってよ。これでオレの後継ぎも安心だな。」
「そうね。」
どうやらオレは父親から望まれて生まれてきたようだ。でもオレは、それがどんなに楽で平坦な道であっても、親の引いたレールを進むつもりはない。オレはオレの力で、自分の道を切り開いて行くという意志を、すでに持ち合わせていた。
まるで赤ん坊とは思えない。一体オレは何者なのだろう。肉体は普通の赤ん坊に変わりはないが、精神はもう自立している。大人の一般常識的なことでさえ、なんとなくはわかる。だかそれを身につけた記憶が、オレにはなかった。