「貴様、複数のネイムを!」
「そんなに驚くことじゃないだろう。複数のネイムを使えるネイザーなんてごまんといる。」
今度は男が笑う番だ。
たしかに複数のネイムを使えるネイザーはいる。
多数の因子をもっていればいいのだから。
しかし、鉄多は自分が一つしかネイムをもっていなかったため、また複数のネイムをもつネイザーを見たことがなかったために、失念していた。
「あ、あ、あ〜!」
「命は一人一つだ。だからこそ尊い。お前は本来死んでたはずだったしかし、例外をあたえてやったのにな。」
鉄多は今度こそ殺されると確信した。
「命の価値は馬鹿にはわからないか。」
鉄多はこいつの噂を聞いたことがある。
長身の若者で誰かを探すネイザー。
そして、そいつは―――\r
なぜ気付かなかったんだろう。
なぜわからなかったんだろう。
なぜ忘れていたのだろう。
なぜこいつがそうであると思わなかったんだろう。
こいつが
「五行世界(ごぎょうせかい)か!」
そこで男の命はつきた。
五行世界は、砂原鉄多の首を風によってはねた。
「こいつも知らなかったか。」
これで何人目だ。
10人を超えたあたりから人数を数えることをやめた。
それに意味をみいだせないから。
俺は、殺人を楽しむ異常者ではないし、殺したやつに祈りを捧げるような善人でもない。
ならば人数なんて必要ない。
俺はただの復讐者にすぎないのだから。
とりあえず疲れた。
雑魚とはいえ、ネイムを使いすぎたな。
「仕方ない。一旦あいつらのもとに帰るか。」
俺は、死体をそのままにしたまま、宿に戻った。
宿屋につく。
そうとう古びている。
柱は白蟻にかなりくわれており、ぐらぐら。
床も白蟻にくわれ、体重をかければ簡単に穴があく。
屋根も白蟻‥‥‥
とりあえず、白蟻が多い、ボロ屋敷だ。
しかし、休めて金をとる家ならば、それは立派な宿屋だ。
そこに土足ではいる。
靴を脱いで歩いたりすれば、そこらじゅう足型の血で一杯になるからだ。
俺が借りた部屋は二階。
だから、当然階段を上がらなければならない。
しかし、ここには階段などない。
白蟻によって脆くなってとこを、馬鹿がスキップしながらのぼったせいで、全壊したからだ。
ならどうするか。