はぁ、はぁ・・・
もうどれくらい走った?
純太は、暗い住宅街を夢中で走り抜けていた。
「麻美・・・」
そう呟き、足を止めた。
麻美・・・・・
未だに麻美が死んだのが信じられなかった。
思い出したくもないが、あのヤギに殺された。
確かに、腹を開かれて。
「俺はあんなになりたくない・・・!」
その時だった。
ガリ・・・
純太の体は固まった。
なんの音?
ガリガリガリ・・・
後を向けば、いたのは間違いなくドレスをまとったヤギだった。この音は、ヤギの蹄を引きずる音だったらしい。
「・・・あぁっ!」
純太は驚愕に動けなくなった。しかも、ヤギの足元には子供らしき、幼稚園児くらいの背丈の子ヤギ達が四体ひしめいていた。
「ミィツケタ・・・・・・早く私の坊や達を返してくださいな・・・・狼さん。」
ヤギは笑わない。
だが、今目の前にいるヤギは口の端を吊り上げて笑っている。人間のように。
「いやだ・・・」
迫り来るヤギから逃げようとするが、うまく足が動かない。
「誰か・・・誰かあぁ!!」
叫ぶが、誰も来なかった。
なんで俺がこんな目に・・・・
俺は何もしてない・・・。
純太は、走って走って、ついにヤギのいない場所まで逃げた。
「・・・やった。」
そういい、純太はガッツポーズを決めた。
これからどうするか・・・。
「まぁ友達の家にでも行くかな。」
携帯を取り出した、時だった。
液晶画面に写った自分。
その後にヤギが写っていた。
「ひぃ・・・・!」
そして純太は意識を失った。