こわれたままのドア口に立ち塞がったのは―\r
やはり巨体だ。
いや―\r
そのシルエットからして何か丸みをおびているな。
むしろ筋骨逞しいと言うよりも実に美味しそうと言うか柔らかそうと言うか―\r
『お、俺の―』
巨大なシルエットは何やら呟き、
『俺のユカリちゃあぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁああん』
ドスッドスッドスドスッ
暑苦しくそして重くヤツは床を踏みしだいてラーミネーターにタックルした!
ズガッシャァァァン
乾いた金属音と共に、スペック上250kgはある筈のサイボーグは勢い良く吹き飛び―\r
バシャアアァァァァ
テラスから落下して、そのままプールに飛び込み、派手にスパークする!
真ん中がきれいになくなった手すりから俺は恐る恐るヤツの断末魔を確認した―\r
ラーミネーターは絶命した。
『お、お前は―』
だがラーミネーターを抹殺したヤツは敵か、味方か―\r
『ぶ、無事だったかユカリちゃん』
ラーミネーターが床にぶちまけていた俺のリュックの中身からフィギュアだけを奪う様に拾って頬にすりよせるヤツは、それ所か俺の友人だ。
『キミがいなくなったら俺は死ぬしかないから』
名前は一三雄大《とさゆうだい》。
身長189cm 体重138Kg―\r
友人と言うよりバイト先除けば唯一の話し相手だ。
そしてヤツの唯一の生き甲斐はフィギュアだ。
『もう大丈夫だよ―僕はキミをもう放さない。僕がキミを一生守ってあげる』
市街戦の跡地みたいになってしまったリビングでヤツは目をうるましてそう誓った。
フィギュアに―\r
キメェ。
『お陰で死なずに済んだが、何でここが分かったんだ?』
俺はそこが不思議だった。
すると、ヤツは《ユカリちゃん》の片足から小さなチップみたいなのを外し―\r
『ユカリちゃんの居場所は24時間把握しているのさ』
キメェ。
『とにかくここから逃げた方が良いな』
一三雄大は自分のリュックに《ユカリちゃん》を入れながら、
『とりあえず俺の部屋に行こう―』
まだ《MEMMA》のメンバーの生死すら判明していないが、確かにそれ以外に選択肢はないみたいだった。