「私達だけであそこ行くのは…やばくない?さすがに」
午後6時。
二人はアズサの家でミーティングしていた。といっても片手にはスナック菓子、もう片方にはコーラ、というリラックスしきったものだったが。
しかし……。
毎度ここにくると香月は驚きを隠せない。
家の至る所にゴミや洗濯物が落ちている。読まれた雑誌は開きっぱなしで庄子は張らない方がいいくらい黄ばんでいる。
つまり、呆れるくらい汚いのだ…家、全体が。
辺りを見回す香月に気付いたアズサが、吹き出した。
「うちが汚いのは今に始まったこっちゃないでしょーが」
「…ま、ね。少しは片しなさいよ?いくらおばさんが…」
「いいの!」
働いていても、の言葉を呑み込んで、香月はそっと息を吐いた。
触れられたくない部分になるとアズサは頑ななまでに意見を聞こうとしない。
一瞬訪れた気まずい沈黙に、折よく玄関から足音が聞こえた。
「アカリ〜?こんな時間まで何やってんの」
トタトタと駆け込んできたアカリは、香月をみるとペコッと頭を下げた。くすんだ赤いランドセルは年季を感じさせる…もとはアズサのものだから当然かもしれない。
「香月ちゃん、こんにちは。…ねぇちゃん、お腹空いた」
アズサは指で冷蔵庫を指す。
「朝、作っといたから揚げあるからレンジね。ねぇちゃんは香月とお話あるから部屋行ってな」
「いいよ。アカリちゃんいても。あの話聞きたいし…」
アズサはダメと手で×を作る。
「こいつ最近いっつも宿題やらないから先生に怒られてんの。…ほら、持ってって部屋で食べな。宿題ちゃんとやんなよ」
…いつもの事ながら姉としてよく面倒をみているアズサに感心する。
私も妹欲しかったな…と思ってしまう瞬間。
乱暴に言っているようでアズサは本当にアカリが可愛いのだ。
笑顔がなによりの証拠。
アカリが台所から出ていくと、アズサはさて、と携帯を片手に持った。
「やっぱり二人はまずいよね。一応あたしも女だし…しかも可愛いし」
はいはい、と受け流す。「じゃあ…亮に頼む?一緒に来て貰えるかどうかさ」
一抹の照れを隠しつつ、香月は切り出した。
天野亮はつい一月前から付き合い始めた香月の彼氏だ。
アズサも香月も小学校の頃から知っていて、半分幼なじみと言っていい。そんな亮に告白された時真っ赤になってオッケーした事を思い出す…前からずっと亮に憧れていた人だから。
「成る程!じゃ私は雅也呼ぼうっと」