箱のなか4

ゆうこ  2008-06-08投稿
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上杉雅也はアズサの強引な誘いに嫌な顔ひとつせずにニコッと笑った。
天野亮は「マジかよ…」と嫌そうにしながらも、結局、香月を心配して来てくれていた。

「亮ってば怖いんじゃないの?かっこつけだけどこういうの苦手そうだもんね」
とアズサが笑う。
「俺はお前と違ってデリケートなの」

PM9・00

日はとっくに落ち、アズサの持つ懐中電灯の明かりが眩しい。

「アズサ、あんまり無駄使いしないでよ」

ごめん、と笑ってアズサはスイッチを押した。

「今日、雅也んちに皆で泊まるってことになってんのよね。…雅也んとこ親が教師だから信頼度が高いし」

香月はありがと、と雅也に頷く。

「でもさ、今時コックリさんなんて古くね?大体夜中の2時に病院でやったやつなんていねーだろーよ」

亮の言葉に雅也が頷く。「僕もあそこみたことあるけど小学生が入れる雰囲気じゃないよね」

「雅也が見たなんて意外じゃない?家まったく反対方向なのになんで?」
アズサは心底不思議そうに尋ねる。まるで自分の管理しているペットに意外な一面をみたとでもいうように。

「え?別に、ちょっと話題になってたから気になっただけ」

「ふーん、そう?」

疑わしげなアズサに香月は微笑む。

最初、アズサが雅也と付き合いたいと言い出した時、意外な気がしたものだった。
押しの強いアズサと対象的におっとりと冷静な雅也の組み合わせが首を傾げさせたのだ。
でも、今となるとむしろ二人はしっくりくる。
アズサの我が儘にも雅也はゆったりと構えていて動じない。
亮と付き合いはじめてすぐにアズサは雅也に告白し、雅也はあっさりとアズサの笑顔にまいってしまったのも、二人の波長が合っている証拠だったのかもしれない。

「2時かぁ…それまでアズサの家で仮眠する?」
香月の提案にアズサは首を振る。

「アカリ寝てるし、ママがいつ帰るか解らないしね。公園かなんかで時間つぶそうよ」

四人は仕方ないか、というようにお互いに目配せし、廃病院近くにある公園まで歩き始めた。

それぞれのバックには懐中電灯があり、香月のバックにだけコックリさんをやる為の紙と蝋燭が入っている。

途中コンビニでお菓子や飲み物を買い、四人はピクニック気分で笑い合っていた。

途中、何気なく隣に並んだ亮が、香月の耳元で小さく囁く。

「俺達ふたりだけでも良かったのにね」

香月は「馬鹿」と目線より少し高い亮の肩を叩いた。



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