偶像

落ち武者  2008-06-09投稿
閲覧数[97] 良い投票[0] 悪い投票[0]

爾来、週刊誌を頻繁に買うようになった。それは次の理由があったからであった。彼ら彼女らの指す「醜」というものとは何か、逆に「美」は何かを調べるためであった。週刊誌においてはいわゆる美男美女の写真が掲載されている。これを精密に観賞し、人間にある「美」の基準を詮索するのであった。テレビのような動画とは違い、写真ならば静画である。この静画をあたかもフナの解剖を観察するように観賞した。そしてノートに写真の切り抜きを貼付け、コメントをこう記載した。「…は目が大きく流麗だ。が、頬の骨が高い。…は目が細いが、他は端正な顔付きだ。」 かくして「美」の分析は授業ノートの倍以上になっていった。観察は以上のように終了した。が、それからやるべきことはあった。
それは外ならぬ私を使った実験であった。ノートに貼付けた写真と分析した特徴を参照しつつ、鏡を見るのだった。鏡で私とこの美男美女たちの写真を照合すると、実験結果は出た。
「醜」ということだった。誰しも認めたくない不合格通知であろう。志望校の不合格通知を何度も見る浪人生のように、何度も執拗に鏡を見続けていた。ゆうに三時間だったろうか。定理を知らないまま、うんと唸る数学の試験にも似ていた。唸っていても、答えなんかないのだ。しかし合格点をとらんがため、答えを手探りで探そうとする。頬骨が横に出ていてタコ焼きのような頬、団子のような鼻、そして総じて骸骨のような骨格…いずれもが答えのない問いである。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 落ち武者 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ