『美里
好きだ
好きだ
好きだー!』
和也の声が、夕日差し込む校舎に 響きわたった。
(そんな事有り得ない!
だって あの和也が
全校一 イケメンの和也が
私の事なんて・・・
私の片思いのはず
ああ やっぱり信じらんない!)
「何 言ってるのよ!
からかわないで!」
『からかってなんか ないよ。
俺 美里とおんなじクラスになってから、ずっと 好きだったんだ!』
(どうしよう!
私 倒れそう・・・)
柊 美里。
14才の秋の出来事。
あの日は 珍しく 部活もなく、居残りしていた。
夕方になり クラスメイトにサヨナラして 生徒玄関へ歩き出した。
背後から 仲良しの学君が 呼び止めた。
「おーい 美里。
和也が 話あるって!」
「えっ 何っ?」と
振り返った瞬間だった。
夕日が スポットライトのように 和也に降りそそぎ、まるで お伽話の王子が現れたように見えた。
和也の告白は 次の日には全校の噂になっていた。
[王子、衝撃の告白!]
その後 私は、[王子の彼女]と呼ばれていた。
3か月が過ぎた。
せっかく思いが通じたというのに、ぎこちない話しか できない。
少し 気まずくなった。
私は とうとう言ってしまった。
「もう一度 友達から始めよう!」
結局 幼い恋は終わった。
あれから15年。
和也には 一度も会った事はない。
そして 私は たくさんの恋もした。
そのときどき 幸せだった。
秋の夕暮れ。
ふっと あの日が蘇る。
あの頃 すべてがキラキラしてた。
心の宝石箱の中で、一際 輝いている [王子の告白]
『美里
好きだ
好きだ
好きだー!』
きらめく放課後の 甘く 切ない メルヘンのような
遠い 思い出・・・・・