第3章 復活
かつて私はこれほどの感激を感じながら最後列で朝礼を聞いた事があったでしょうか? 2003年5月19日、この会社の信頼性保証1課で私は再び働ける最高の感激に震えながら朝礼を受けました。ほんの数ヶ月前までは、20数名の社員の先頭で檄を飛ばす立場であった私は、列の最後尾で、1アルバイトの立場で朝礼を受けていました。頂点から最下位に転落したのに、私は20数年前に新入社員に成った初日にも匹敵する感激を味わったのです。これは、突然仕事を奪われ、世の中に必要とされていない孤独感、疎外感を味わったからこそ感じられたのだと思います。
それから毎日、出勤することが楽しくて、嬉しくて仕方が有りませんでした。時には3週間休み無く働いて、
「働き過ぎだ。」
と、注意を受ける事も有りましたが、私としては働ける事が嬉しくて、休む事の方が苦痛に感じるくらいでした。朝、目が覚めると、
「よし、今日も働ける。」
と、寝具から飛び起きる毎日でした。無論、アルバイトに与えて頂ける仕事は限られていましたが、誰にも負けない努力をしていたと確信しています。
アルバイト初日、朝礼後、少し猫背気味でアマチュアレスリングでもしていそうな体格の良い青年が近付いて来ました。後で知ったのですが、この青年は、私担当の係責でした。この会社では、一般で言う、係長を係責、課長を課責と呼んでいました。
この体育会系の係責に案内されたのは広さ6畳程のエアコンの轟音が耳障りな密室、環境試験室でした。その日は低温環境でした。室温10℃、湿度15%、防寒服を渡されて、籠もりっきりでコピー機のサンプル画像を採りました。次の日は高温環境で、室温32.5℃、湿度80%の中、前日と同じく、コピー機の初期画像サンプル採りを行いました。体の芯から冷やされたり、足元に汗溜まりができる程暖められたり、機械の耐久テストと言うより、人間の耐久テストを受けているようでした。そんな過酷な環境の中での仕事でしたが、辛いとは思いませんでした。とにかく仕事ができる喜びを噛み締めながら、会社に出勤することが楽しくて、嬉しくて、人目が無ければスキップしたい程、ウキウキ、ワクワクしながら、アルバイト生活を楽しんでいました。
つづく