「私はあなたとのゲームを楽しみたい。」
ゲームだと。
完全になめてやがる。
しかし、俺がこいつのゲームにのるとかぎらないのに。
「だから、こんな序盤でつまずくなんてことはないように。あなたには、たくさんの敗北をジックリとあじあわせてから、あたしが殺すんですから。」
また一人称を変えてきたか。
「では、あなたを殺せる日を待っています。」
話は終りか。
えられた情報はたいして多くない。
警察にビデオを渡して、このことは忘れるのが一番だな。
「そんだ。言い忘れてました。あなたは必ず自ら私を追う。」
なんだいきなり。
しかもこの自信は?
「この言葉を聞けばね。」
そして、覆面から発せられた言葉。
その言葉から連想された・・・・・・
「天は我にあり。」
思い出されるあの光景。
父と母が・・・・・・
そこに残された一つの手紙。
その手紙の最後にかかれた一行。
「こいつまさかあの時の!」
「では、そこの騒がしい人と協力してでも、追ってきなさい。」
ブツン。
「待て!」
無駄なのに、声をあげていた。
俺には怒りしかなかった。
映像は終り、
「最近の事件は恐ろしいですね。では、これらの事件については、今日午後5時からのニュースで詳しくお伝えします。それでは。」
通常の映像がながれる。
臨時ニュースは終った。
どこも爆破事件をとりあげていたようだ。
しかし、俺にはそんなニュースはどうでもいい。
「兄貴、なんすか今の?」
あいつがあらわれたんだ。
俺達家族を地獄におとしたあいつが!
「兄貴!聞いてますか?」
声?哲史か?あ〜、こいつ、いたのか。
「大丈夫っすか?昔の顔に戻ってますよ。」
うるさい。
「あれはなんなんすか?」
黙れ。
「兄貴!」
パシン。
いきなり頬をぶたれた。
「しっかりしてくださいよ!」
なにがおこったんだ。
俺をあんなに慕っていた哲史に、殴られるなんて考えてもいなかった。
「こんなのにのせられちゃだめだ!冷静になってください!」
哲史・・・・・・
「兄貴、言ってたじゃないっすか!冷静さを失えば、状況や情報の判断をあやまるって。」
それは俺のセリフ。
もし相手が多少キレるやつなら、嘘だろうがなんだろうが相手を・・・・・・
「兄貴!」
そこで正気をとりもどした。