「もーっ!何よハルのバカッ!デレデレ…エッチ!」
レベッカという女の子に抱き付かれる度に顔を赤くしたり青くしたりするハルに呆れ、アキはニューヨークの裏通りを歩いていた。
人気の少ない裏通りは暗くてじめじめしている。
たまにすれ違う人々の目はねちっこく、熱を帯びた視線は怖かったが、ハル達の所に戻るつもりは無かった。
どうせ、ハルはムチムチの女の子が好き。
自分には見向きもしない。それが嫉妬とわかるには、まだアキは若すぎた。
もう基地に戻ろう。
そう思った時だった。
ふと、頭の中が『赤』く染まり、一瞬激痛が走る。
そしてすぐ、目の前にぬっと大きな人影が現れ、アキの視界を遮った。
「え?」
大柄な男が三人。
アキを見て、ニヤニヤしながら何やら話し合っている。
言葉はわからないが、アキは彼らのただならぬ雰囲気を感じとった。
回れ右をして駆け出したものの、腕を掴まれ引き戻されてしまった。
頭の中が真っ『白』になった。
だが、次の瞬間、それは真っ『黒』に染め上げられて、続いて流れだした『赤』がアキの頭の中を満たしていく。
気が付くと、アキは三体の屍体の上にしりもちを付いていた。
「大丈夫かい?『ルナ』」
聞き覚えがある……というより忘れる事もできないであろう、透き通った、でもどこか邪悪な声がニューヨークの裏通りに響いた。
「『アポロ』……」