ワーキング・プアからの脱出 15

楽園 海風  2008-06-12投稿
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1人で3台操作が普通のところ、私は倍以上の7台を操作できるように成りました。勿論、休む暇は無く、1台目から時計回りに機械を次々操作して行き、最後の7台目の操作が終わる頃には、1台目が作業終了していて、また同じ作業を休み無く繰り返しました。環境試験室の中を、まるでコマネズミのように、くるくる回って仕事をしていました。
自分の担当以外の機種の担当にも、何か手伝う事は無いかと聞いて回り、土曜、日曜の休日出勤を貰って歩きました。アルバイトは休日出勤でも時給は同じでしたが、そんな事は関係ありませんでした。とにかく、仕事を貰えるだけで嬉しくて、休みを取る事など考えませんでした。21日間休まず働いた時は、人事課から、
「1週間に1度は休んでください。」
と、注意されました。頼まれた仕事は、どんなに忙しくても断りませんでした。そうする事で、この会社の全ての機種を操作する事ができるようになりました。
9月の終わりに、それまでモノクロ機を主に担当していましたが、1ヵ月間だけカラー機の応援をすることになりました。私はモノクロチームでしたが、カラーチームからも応援要請が来るようになったのです。それは、如何なる仕事も断る事無く仕事をしたおかげで、モノクロ機とカラー機の操作ができるようになったからです。
カラー機の評価は本社ビルから徒歩で10分程度に在るビルの6階で行われていました。部屋に入った瞬間、
『この製品は成功しないな。』
と、直感しました。部屋の中は雑然としていて、足元には部品や工具類が散らかっていて、壁には大きな紙が貼られ、雑然と問題点が書き殴られていました。
良い製品は、良い環境から生まれます。開発現場を一目見れば、その製品が良い製品か、悪い製品か判断できます。
良い製品の開発現場は、一部の隙も無く、整理整頓清掃が行き届き、張り詰めた空気が漂っていて、一歩足を踏み入れるだけで、背筋が伸びるような緊張感を感じるものです。製品開発育ちの私には、この緊張感の無い、だらけた空気感から、
『この製品は成功しないな。』
と、直感しました。後に、この製品は某保険会社に多数納入されましたが、多くの不具合を発生させ、その後は次モデルに引き継がれました。私の第6感は的中しました。
つづく

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