…その夜、いつも通りにバットが闇を切る音が真田の家の庭からもれていた。ただ、いつもとは違う速さで。「ブン!ブン!ブン!」
(くそっ…俺はなんてことを…野球選手のあるべきすがたとは人に夢や希望を与えることじゃないのかっ!)
真田は自分のふがなさを責めるようにバットを振った。「ブン!ブン!ブン!…」バットが闇を切る。まるでそれは自分の心を切っている。そのように真田には感じられた。
(…それなのに最近の俺は…自分の結果だけを求めて…自分という存在を主張するためだけにに…さらにそれが失敗しても、自分のせいじゃない。年やコーチのせいにしていた。ひらきなおってた。自分のせいじゃないと。…俺はなんてことを…)
その時、真田の眼から涙が一筋流れて、芝に落ちた。
続く