災いは突如襲ってくる…
逃げ惑う民に炎と牙は容赦なく振りかかる
人々は恐怖する…
その深紅の眼に…
燃え上がる獄炎に…
その異形なる姿に恐怖する私は逃げている…この国を民を捨て…父を母を捨て…逃げている…足がすくむ…涙が溢れてくる…頭が…はたらかない…
怖い…怖い…
「姫、姫様!タツキ様!」悲痛なそして怒りにも似た声に私の思考は一時的に恐怖から解放され声の主に目を向けた
「ジンエイ…」
元、竜の守護近衛長、私の教育係。ジンエイは泣き崩れそうな私の両肩を掴み鋭い眼で私の眼を見据え、言葉をかけた…
「貴女はこの国を救う為地上に降りねばなりません」ジンエイは語る…怒りを押さえ込み…
「この度の敵…恐らく…邪竜…」
「邪…竜?」
この世界の天敵、遥か昔この世界を治めていた光の竜と地上に住む人々によって封印された地の底よりはい出る闇を好む者…
「なぜ邪竜が…封印が解けたの?」
「封印は解けてはおりませぬ…ですが解こうとする輩がいるようです。」
「な…ぜ?そんな事を…そんな事をすればこの世界は…」
〈どごおおん!〉
言葉を遮るように天井が轟音と共に崩れ落ちて来た…巨大な影と共に…