次の瞬間。
その背に黒い右翼が広がる。
微かに視線を感じる。
顔は見えない
でも…
微笑した。
そんな気がする。
動け、
強く思うと右足が、一歩前へ進む。
左足がまた一歩。
また一歩。
確実にその人に近づく。 気持ちが焦る。
早く、
早く、
…だが進まない。
側に行きたい
早く。
また、化け物がその人を隠す。
その人の姿はそこには、もうなかった。
何処を見てもいない。
ふと、呼ばれた気がした。
空を見た。
息を飲む。
そこに『青』があった。 何処までも
何処までも続く『青』があった。
何かが落ちてくる。
手を伸ばしそれを掴む。 一枚の黒い羽。