最近橋本麻里奈の学校にくる回数が減っている。
教師家に訪問してみるが、鍵がかかっていていないのだ。
そんな橋本の欠席を、橋本の一番の親友の佐藤優子は悲しんでいた。
電話をかけるが、声には元気がなく、欝状態のようなのだという。
「麻里奈来ないね〜」
いつしかそれが優子の口癖になっていた。
そして友達に「また言っている〜」と言われるのだ。
電話で、文化祭までには来てね!と言ったりして励ましたのだが、一向に来る様子はなかった。
そして、
「今日も来なかった〜」
と言って優子はうなだれた。
そんな日々が過ぎ、ついに文化祭の日がきてしまった。
結局橋本は来ず、出店をする人数は一人少なくなる事になった。
「麻里奈大丈夫かなぁ・・・」
優子は午後から店をやる事になっているので、出店の間を一人ぶらぶらと歩いていた。
出店の音楽や、人の声の騒音で、自分の声すら聞こえなくなっていた。
「うるさい・・・」
携帯を耳にくっつけ、片耳を塞いだ状態で電話をしていた。
プルルルルル・・・
「そこの人」
プルルルルル・・・
「?」
すぐ後ろで声がした。
今そこの人て誰か呼んだ?
優子は振り返った。
すぐ後ろに、ボサボサ頭の見知らぬ若い男が出店をやっていた。呼んだのはこの男らしい。
優子はしばらくその男を見ていた。
そして、浮かんできたのが
どう見てもこの人この学校の人じゃない。
「あの〜、あなたこの学校の生徒じゃないですよね?」
聞くが
「そうですけど?」
そう言い、平然と座っている。
優子はマナー違反は嫌いだった。
「だから、文化祭には生徒以外の人は来ちゃダメなの!」
怒鳴ると、男は「へぇ」と言い、すぐ人気のない校舎裏に消えてしまった。
「まったく・・・」
そう言うと、優子は電話を再開した。