足が、腕が、空をさ迷い、急速に力を失ってゆく。
自らの行く末が、自然と脳裏に浮かんだ。
それは、不安でも、安堵でもない、予想。
――私、死ぬ、のか―\r
突然背中に衝撃を受け、気が付くと腕から解放され、地面に投げ出されていた。
ぼやける頭をそのままに、なんとか周りを見回すと、横たわる男に尋問をしているディルの姿が見えた。
「大丈夫かい?」
どうやら、ジンが助けてくれたようだ。
首や、掴まれた腕の骨が悲鳴を上げているのを無視して体を起こす。
「メシアは!?一緒じゃないの?」
ジンの問いにはっとする。
「ディルとジンは……一緒にされていたの…?」
―武器を取られ、自然の力によって起こる、魔法が使い難いこの収容所の中で、警戒すべきは、メシアや妖需よりも、ディルのはずだ。
場所など関係無しで魔法を放てるフィレーネはともかく、メシアを引き離す理由が、全く解らない。
無いはずだ。
私達がヒトであったなら。
「――二人を捜そう」
嫌に落ち着いた、冷え切った感じのジンの声が、不安を一層増幅させた。
「被験体hbe-27。お前はどうしてそう聞き分けがないんだ?」
ぼんやりとした薄明かりの中、いかにも陰鬱そうな声が響く。
「…………」
被実験体と呼ばれた少女は、ひどく虚ろな目をして、簡易ベッドに身を横たえている。
聞き慣れた、金属同士がぶつかり合う、耳障りな音。
床に置かれたケージの中からは、ごそごそと何かがうごめいているのが分かる。
だけれど目を閉じると、私は飛べる。
いろいろな所へ行って、沢山の人に会って………
私は、いつでもあなたの側へ飛んでいける。
だから、もう大丈夫だよ。
点滴の音が規則的に鼓膜を撫で、瞼が次第に重くなっていく。
永の闇が続くように思えるほどに、急激なけだるさが全身を包み。
いつの間にか、全てが途絶えた