香月は亮を見舞った後、ぶらぶらと歩きながらあの時立ち寄った公園のブランコに座って足を揺らしていた。
あれはまさに時間との勝負だった。
携帯から警察へ電話を入れた後、慌ててアズサを捜し出し…都合よくアズサから自分の方へと飛び込んで来てくれた。
あらかじめ服の中に隠していた鋭いガラスで、油断していたアズサの首を突くのはたやすかった。
指紋を拭き取り、痙攣しているアズサの手にガラスを握らせ…どこかに監禁されている亮を捜した
雅也が死んでいたのには驚きもしなかった。
幸い、戸口にチェーンがかけられていた為、亮を見つけたのは早かった。テープを外し、小さく丸めてポケットに押し込む…チェーンは雅也のポケットに突っ込んだ。
そして亮がスヤスヤと寝ているのをもう一度確認してから、自分は一階で自ら後頭部を打ちつけて(思いの外痛かったが)その場に転がり、警察の到着を待った
警察は目論み通り、アズサが錯乱して雅也を殺したあと、自らの命を絶ったと解釈した。
本当に運が良かった
アズサを殺せたなんて。
アズサが亮を激しく愛していたのは知っていた。
また、亮がアズサを心の底では愛していた事も。
亮は私に告白をした…あまりにもアズサは近い存在だから。
でもいつか、亮は気付いてしまう。
本当の自分の気持ちに。
他の女ならいい。
でもアズサだけには渡せない。
亮がアズサを「アズ」と呼んだ回数だけ、私はアズサを憎んでいた。
でも、それも終わり。
アズサが自ら作り上げた虚飾の箱のなかで、彼女は死んだのだから…。
きっと今度は、アズサが「天使さま」になる。
そう考えて
香月はブランコから飛び降りた。
すべては
もう
終わったこと
さよなら
わたしの親友。
終