「アキー――!!」
ハルはニューヨークの裏通りを駆け回っていた。
道行く人は奇声を上げながら走り回る東洋人を不思議そうに見ている。
何故だろうか?
わからなかった。ただ、何か大きな危険がアキに迫っている。
根拠は無いが、間違いない。
途中まで追い掛けてきていたレベッカともはぐれてしまったが、ハルの頭の中にはアキしか居なかった。
「何処にいるんだ!?アキ!!返事をしろよ!」
暗い路地を通り抜けようとした時だった。
どくん
頭の中が脈打ち、強烈なイメージが流れ込んできた。それは段々色を帯びてまとまり始める。
『赤』
血のように赤く、恐ろしい色。
そしてそれは段々薄く色褪せ始め、完全に色落ちて『白』く果てた。
「ダメだ・・・アキ、諦めちゃダメだ!!」
何故アキをイメージしたかはわからない。
だが、アキは今絶望している。
『白』は何色にも染まってしまう。
『黒』にも『赤』にも。
違う。そんな色じゃダメ。前から思っていたが、アキは『白』を好んで着過ぎだ。
アキには絶対『蒼』が似合う。
この先にいる。この暗い路地の先で、アキは絶望している。
直感ともとれない確信に背中を思い切り押され、ハルは暗い路地に飛び込んだ。
疲れるのも忘れて走り、暗闇の奥に切れかかった電球がバチバチと点いたり消えたりしている場所がある。
その明かりの中に、白い髪の少年に髪をわしづかみにされ、グッタリと横たわるアキの姿があった。