犯人にでさえ、声を荒げたことはないというのに、一体どうしたというのか。
たずねられたメレディスはこくりとうなずくと、その大きな瞳でウィルをじっと見つめ、人差し指を自分の口の前に持っていった。 また、ドアを隔てた部屋の声に集中する。
「こんなクズの街の奴ら全員死んじまえばいいからだよ!」
例の不審者の声だ。
(クズ・・・・!?)
ロードタウンは、この国が戦争をしていたころ、国家がつれてきた他国の奴隷達が集まった街である。そのため戦後も、敵の国の者としてまわりからひどく差別を受け、蔑まされる生活を送っていた。
その差別は今もなお、消えることをやめぬろうそくの炎のように、貪欲にかすかに、灯っているのである。
ハリソン警部がこのロードタウンで生まれ育ってきたことをウィルはよく知っていた。彼の怒りが手に取るようにわかった。
ウィルの哀しい記憶達が走馬灯のようにかけめぐる。
「メレディス、あいつは、あの男はいったい何をしでかしたんだ・・・・?」