優子は電話を再開しようとして携帯を耳にあてた。
プルルルルル・・・
「優子〜今からカラオケ大会やるって〜!行こ〜!」
人込みの中から友達が呼んだ。
少し迷ったが、優子は呼び出し中の電話を切った。
仕方ないなぁ・・・
そう言い、携帯を閉じた。
「やっぱり出ない・・・」
再び橋本に電話をしていた優子は呟いた。
カラオケ大会が終わり、一人で携帯に耳を押し付けていた。
夕方になり、校舎の窓は眩しいくらい光っていた。
「麻里奈・・・悩みがあったら私に言いなよ?」
それだけ留守番電話のメッセージに残した。
「さてと・・・帰るかな。」
友達達はまだビンゴ大会やらやるらしいが、優子は断って橋本の家に行くことにした。
優子は橋本の家を知らなかったが、教師から貰った地図を見て橋本の家まで向かう事にした。
橋本の自宅はアパートだった。
「ボロボロじゃん・・・ここに麻里奈一人暮ししてるんだよね・・・」
優子はアパートの入口をくぐろうとした。
「痛い!」
いきなり腕に、おもいきり引っ張られるような痛みが走った。
何者かに腕を引っ張られたらしい。
「行かない方がいいよ?」
低い声が話しかける
誰・・・?
痛い腕をさすりながら優子は振り向くと、そこには文化祭の時にいた男がいた。
相変わらず頭はボサボサだった。
「何なんですか?離してください。」
男はにっこり笑って繰り返した。
「行かない方がいいよ?」
優子は怖くなった。
変な人・・・ストーカー?
「離してください!」
思いきり男の腕を振り払い、アパートの中へと走った。
悲鳴にも似た声を吐き出しながら、橋本の部屋を捜し出し、部屋の中へと逃げ込んだ。