悲しい…。
悲しくて悲しくて、まだ涙が出るの。
悔しくて悔しくて…。
自分を責めずにはいられないから。
もぅ終わったはずなのに…もぅ諦めたはずなのに…
もぅ無理なのに…。
12月も半ば。
街は赤と緑と銀色のベルがキラキラしてる。
駅の階段を降りて、いつもの道を通る。
右手にはチョット高めのお持ち帰り用のお寿司屋さん。
私はお財布の中身があったかい時にだけ、ここのお寿司屋さんで1500円の握り詰めを買うの。
いつもは駅前のコンビニで珈琲とおにぎり。
エレベーターで四階に上がる。五人も入ったらギュウギュウになってしまう新しくも古くもないエレベーター。
カランカラン。
「おはようございまーす」
「はぃ、おはよう」
握手…。
このお店は、出勤したらまず幹部との握手から始まる。私はこの握手がだるくて仕方がなかった。
「まこちゃん、今日はシャンパン何本いけそ〜??」
「何本でもいけるけど四本予定だょー」
「よっしゃ〜ガンバッテね〜」
毎日こんなやりとりから私たちの仕事は始まる。
そぅ。
太一とはここで出逢った。
大きくも小さくもないこの街で。
このお店で。
あの頃の太一は、暖かさも冷たさも感じられない、そんな瞳をしていた。