彼女が渋々と電気のスイッチに手を伸す。
私はどうにかなりそうだった。
カチッ
一瞬、電気の明かりに目が眩んだ。
「……………。」
私は言葉を失った。
目の前に広がっていたのは最悪な光景だったけど、私が考えていた物よりは遥かにマシだった。
おびただしいゴミの山。
紙屑や生ゴミや多分汚物的な物が、フローリング全体に散らばっていて小蠅が飛び交っている。
「何なの?これ…」
私は思わず鼻と口を手で覆った。改めて凄い異臭だ。
「フフフ…。死体でも転がってると思ったでしょ?昨日の傘で刺してって話しは嘘よ。」
彼女はケラケラと笑った。
私は無性に腹が立った。
冗談じゃない。
私がどれだけ心配して此所まで来たと思ってるんだ…。
「ふざけないでよ。」
私はまだ笑っている彼女に、強く言った。
「ごめん。怒らないで。だってあ〜でも言わなきゃ、来て貰えないと思ったのよ。」
「だったら、最初から正直に全部話してよ。私がどれだけ心配したか分かってる?てか、このゴミは何?」
「浮気した彼への仕返しよ。」
彼女はニヤリと笑う。
その笑顔には何かとてつもない邪気がある様に感じた。
「彼が浮気してるってのは本当なの。だから私、何か仕返しがしたくてね…。」
「それでコレなの?」
「そうよ。彼が出張で家を空けてる3日間でやったの。ゴミや犬の糞をその辺から拾ってきてね。大変だったわ〜。」
彼女の行動は、私の理解を遥かに越えていた。
いくら浮気されたからといって、こんな嫌がらせ悪趣味だ。
「彼はいつ帰ってくるの?」
「もうすぐよ。」
「えっ?」
「だから昨日約束したじゃないの!!彼にあの女と別れるように言うって。」
「でも、あれは…」
「お願いよ。私の言葉には彼、聞く耳持たないの。」
「そんなの…」
「そんなの自分達で解決しなよ」そう言う前に、部屋のドアが開く音がした。