朝。
どんな1日にも朝はくる。
宗嗣はその意味をまざまざと感じさせられていた。
「はぁ〜〜畜生が。何故太陽くんは1日ぐらい休もうと思わないのかねぇ〜。」 摂理だからだ。
宗嗣は心の中で自分に毒づき、何度目かの大きな溜め息をつくと、鐘楼台学園という大きな枠組みの中の
<高等部人間心理学科>
へと身支度を整え始める。
第一章
歪曲する青春
4月上旬。
宗嗣は、これから起こるであろう甘酸っぱい経験やめくるめくアバンチュールを妄想し、一人、別世界に浸っていた。高校や中学校の初日と言えば、誰しも、
なめられたくない。
異性に好印象を与えたい。等々、とにかく自分をアピールしたい気持ちが先行するものだ。
が、この別世界に飛んでる 妄想少年はその、事実と 検証?にもとずく結果を 根底から覆すほど、自分の 醜悪な姿を隠そうともしない。むしろ、我ここに有り。と、釈迦でもないのに威光 すら放っている様に、殆んど今日出会ったばかりの 級友逹は、威光を断片的に剥ぎ取って・・・。
-危ない奴かも。-
-近づかない様にしよ。-
他多数。
つまり、各々好き勝手に 思っているわけだが、当の本人は軽蔑の視線が自分に集中させられてることすら気付いていないわけで。 無論、少し赤見がかった髪をツインテールに縛り、 くりっとした真珠の様な黒い大きな目を持つ少女が、そこは手刀でなく、これからお世話になるであろう 世界史の教科書を宗嗣の 頭上から、多分、後頭部にかけて振り降ろそうとしていることにも、妄想少年は全く気付かないわけで。