「…おる、とおる。」
「まっ待って!母さんっ!!」
がばっと、勢いよく目が覚める。
また、あの夢だ。
ここ最近は、同じ夢を見て魘されている。
あの日の悪夢が、再び自分の脳裏に浮かぶ。
「…くそ。」
もう思い出したくないのに、忘れたいのに、何でこうも同じ夢を見る。
『俺は母さんに許されないのだろうか…』
6年前の、ちょうど同じ蒸し暑い6月、俺は一生背負うことになるであろう罪を犯した。
きっとどんなに謝っても許されることのない大罪だ。
もし6年前のあの日に戻れたらどんなにいいだろう、もう一度やり直せたら大事な人を失わずに済んだかもしれないのに。