私は性格上、例え最終的に、より高い順位になる可能性があるとしても、そのために目の前の試合を意図的に負ける事はできませんでした。特に、その問題の試合相手が、常に練習試合を行っていた、中学時代のチームメイトのO君がキャプテンを務めるZ高校なら、なおさら意図的に負ける事はできませんでした。きっと、O君も同じ気持ちで、全力で挑んで来ると信じていました。
試合前にチーム全員を集め、
「この試合に負ければ、最終順位は、より高い順位を狙えるかも知れない。しかし、最終順位にこだわって、目の前の試合を意図的に負けるという卑怯な手を使う事は私にはできない。記録としては高い順位を残す事が学校の名誉ななるかも知れないが、そのために不名誉な卑怯な振る舞いをする事は、逆に名誉を汚す結果になると思う。全力で戦う事に賛成してくれるか?」
と、訊きました。
部員は全員、私に賛成してくれました。この時の部員全員の目の輝きは、私にとって、高校生活で得た、最高の宝物でした。この時、仲良しクラブは確実に戦う軍団に変身していました。私はチームの心が一つになった事を実感しました。
試合が始まり、我々は全力で戦いました。私の考えに反し、Z高校は敗者復活戦にまわる事を選択したようで、明らかに戦意を感じられませんでした。
先述のように、Z高校とは常に練習試合をしていましたから、実力は把握していて、お互いに互角か、少しZ高校の方が上だっかも知れません。
試合結果、Z高校はほとんど得点しなかったように覚えていますが、O君が真っ赤な顔をして怒っていました。
お互いに敗者復活戦狙いの、だらだらした試合を予想していたのが、私のチームが全力で戦い、Z高校に完勝した事に対して、卑怯な行為を行った、自らのチームに怒ったのか、試合終了と同時に会場から起こった、我々のチームのフェアプレー精神に対する、割れんばかりの拍手の嵐に怒ったのか、今となっては分かりません。
試合終了時のキャプテン同士の握手の時、
「もう一度、練習試合をしよう。」
と、O君が言いましたが、
「今日で引退するから。」
と、断りました。
Z高校の最終順位は覚えていませんが、対我が高校との最終試合は完敗という記録が残りました。逆に、我々の高校の対Z高校の最終戦は完勝という記録とともに、引退する最終の高校総合体育大会を全力で戦った記憶が残りました。
つづく