我々に良く似た艦船と装備を持つ艦隊・それを率いる小賢しい指揮官―度重なる衝突で、ギャームリーグ陣営でもフリースユニオン内に、他の部隊とは一味違う異色の集団が存在し、それがかなり手強い事を認識する様になって行った。
中でも、《スーパーマジノ》要塞線を巡る攻防で、ガニバサと《ネオフリート》の好敵手となっていた第一八機動部隊司令官・マー=イユールー提督は、一早く彼等の実力と将来性を見抜き、ある意味フリースユニオン軍内部よりも高く評価していた。
彼はガニバサに何度も苦杯を飲ませ、その初代旗艦《ザンベジ》を撃沈するまで追い詰めた事もあるが、今だ《ネオフリート》を軽視する大司令部は、より大規模な戦力で彼等を殲滅するマー=イユールの提言に食指を動かす事は無く、結果的にガニバサは満身創痍となりながらも、敵の油断に助けられる形で虎口を脱した。
そうこうする内に銀河元号一五三九年が明けて、フリースユニオン=宇宙解放連盟側は遂に攻勢に入る事を決断した。
その原動力となったのが一連の新型艦艇《E=シリーズ》である。
鹵獲したギャームリーグの軍艦を徹底的に研究してテストした成果が、それにはふんだんに盛り込まれていた。
性能こそギャームリーグ同艦種の六割に留まってはいたが、それまでの半数の人員で運用でき、それだけで無く、生産工程や必要部品数・消費資源で五分の一に・運用操作系統の簡略化で新兵の慣熟日数が四分の一・他にエネルギー効率は三倍近くにまで好転し、扱い易さ信頼性では右に出る者の無い創意と工夫が凝らされていたのだ。
他にも、全ての艦種での部品の共有化・操作運用系の統一化・ユニット組み立て製造方式の採用等で、限られた期限で大量生産し、しかも整備補修も簡単、お陰で年間稼働日数も二四0日―ギャームリーグ軍の一・五倍にまで延ばす事が出来た。
その引き換えが一定の性能減だったのだが、それを補って余りある利点を《E=シリーズ》が持っているのは明らかだった。
その生産性に限っても、同艦種でギャームリーグが一隻建造する時間と資源と労力でこちらは一0隻建造出来る―しかも、非熟練の徴用工員主体の生産ラインでだ。
故に、ギャームリーグにとどめを刺したのは他ならぬこの《E=シリーズ》だ―経済の専門家は特にガニバサよりもこちらを評価するのが常だった。