「もう…そんなに大きな声を出さないでよ…」
アリネスは自分の耳を軽く叩くと、うんざりしたような表情で椅子から立ち上がった。
「あの…、魔力、ありがとうございました」
ロイは部屋から出て行こうとするアリネスに向かって、感謝しながら頭を下げた。
「いいのよ。でも、力は加減して使わなきゃ駄目よ」アリネスは笑顔で三人に手を振ると、リグラや護衛騎士達と共に部屋から出て行った。
「よし、お前達!部屋へ案内するからついてきなさい!」
ライスは自らの筋肉を誇示しながら、ポーズを作って三人に呼びかけた。
「…」
三人はそれを見た瞬間、一斉に目を反らしてしまった。
「リグラ」
アリネスは自室に戻るまでの廊下を歩きながら、真剣な表情でリグラに呼びかけた。
「何でしょう?」
「あのロイという子…魔力がわずか二リムスしか無かったわ」
「!」
リグラはその言葉に、思わず絶句した。
「あの魔力では、せいぜい回復魔法十回程度が限界ね。魔法障壁も四回…それもかなり薄い壁を作った上でこの回数よ。あんなソードメーカー、見た事も聞いた事も無いわ」
アリネスは一つ小さく息を吐いて、首を横に振った。あの魔力の低さ…一体どういう事なのかしら?―